伏黒甚爾は五条悟との戦いで命を落としたものの、渋谷事変では降霊術によって復活します。
殺戮人形となって暴走する中、息子の顔を見て記憶を取り戻した後、「よかったな」という言葉を残して自害しました。
一見冷酷な殺し屋に見える甚爾ですが、その一言には深い意味が隠されています。
本記事では伏黒甚爾の最期の言葉の真意と、死亡から復活、そして最期を迎えるまでの経緯について解説します。
伏黒甚爾「よかったな」の意味と真意とは?
伏黒恵が禪院家に売られなかったから
禪院家は「御三家」と呼ばれる名家の中でも、特に劣悪な環境の家系で知られています。
かつて甚爾は恵を禪院家へ売ろうとした際、「才能があれば幾分マシ」と発言しました。
つまり、才能がある者であっても決して快適な環境ではないと分かっていたのです。
しかし、再会した恵が伏黒性を名乗っていたことで、禪院家ではなく五条悟に引き取られた可能性を察知したのでしょう。
伏黒の名を聞いて「よかったな」と漏らした理由は、劣悪な環境を回避できたことへの安堵だったと考えられます。
伏黒恵が自分に殺されずに済んだから
殺戮人形となった甚爾との戦いが続いていれば、恵は命を奪われていた可能性が高いです。
甚爾の能力は指4本分の宿儺以上で、特級呪霊すら簡単に祓える実力者となっています。
しかも、甚爾と戦っていた時の恵は領域展開を使用した影響で、呪力も殆ど残っていませんでした。
そのため、甚爾が戦闘中に記憶を取り戻し、自害を選ばなければ確実に死んでいたでしょう。
甚爾の行動が親としての情か、単なる気まぐれによるものかは定かではありません。
いずれにしても甚爾は、恵との戦闘を望まなかったため、恵は生き残ることができました。
自分と亡き妻に向けたメッセージ
「よかったな」は恵への言葉に見えますが、自分と最愛の妻に向けたメッセージという考え方もできます。
五条悟との戦いで最期を迎えた時に思い浮かべたのは、恵の母と恵の姿でした。
恵ママは甚爾の生き方を変えるほど、甚爾にとって重要な存在と明かされています。
しかし、恵ママが死亡してから、再び現在のようなアウトロー気質の人間に戻ってしまったようです。
そんな1番大切なものを失った甚爾にとって、最後の心残りは彼女から託された恵だったのではないでしょうか?
つまり「よかったな」は、恵の無事だったことを、亡き妻と自分に向けて語りかけた言葉かもしれません。
伏黒甚爾の死亡理由と復活の経緯
死亡理由:五条悟との戦いで致命傷を負ったため
懐玉・玉折編で、天内理子殺害を達成した甚爾ですが、そこへ反転術式を習得した五条悟が立ち塞がります。
1度は勝利した相手だったため、甚爾もさして警戒せず五条との再戦に臨みました。
しかし、五条は五条家でも一部の人間しか知らない、無下限呪術の奥義「虚式・茈」を繰り出します。
茈を知らなかった甚爾は、五条の攻撃に対応できず、体に致命的なダメージを負ってしまいました。
その後、五条から遺言を聞かれた甚爾は、息子が2,3年したら禪院家へ売られること。
そんな息子を「好きにしろ」と五条に言い残して、息を引き取りました。
復活理由:渋谷事変でオガミ婆の降霊術による復活
死亡したはずの甚爾でしたが、オガミ婆の降霊術によって11巻95話で再び姿を現します。
しかし、魂の降霊は危険を伴うため、オガミ婆は甚爾の肉体情報だけを孫に宿したはずでした。
その後、オガミ婆は最強の肉体で渋谷を支配しようと企てますが、甚爾の肉体があまりに強力だったために肉体の主導権を奪われます。
結果として孫の人格が消失し、甚爾の意識が復活する事態となりました。
2度目の死亡理由:伏黒恵との戦いで自害したため
13巻113話で描かれた親子の戦いで、甚爾は宿儺に匹敵する速さで恵を追い詰めました。
恵の捨て身の攻撃も効果がなく、恵が最終手段に出ようとした瞬間、甚爾の記憶が蘇ります。
生前の記憶がフラッシュバックした甚爾は、恵に名前を尋ねます。
そして、恵の「伏黒」という返答を聞いた後、満足気に「よかったな」と言い残して自害しました。
伏黒甚爾の初登場と重要なエピソード
伏黒甚爾の初登場は何巻何話?
伏黒甚爾の初登場は原作8巻66話です。
呪詛師集団Qと五条悟の戦闘を見守りながら、盤星教と結託して活動する姿が描かれました。
甚爾は周到な計画で五条悟の心身を消耗させ、隙を作り出します。
そして、任務完遂が近づいた五条悟に奇襲をかけ、強靭な肉体と呪力ゼロの特性を活かして五条悟を翻弄。
最後は天逆鉾で五条悟の喉を貫き、見事現代最強クラスの術師を仕留めてみせました。
渋谷事変にて伏黒甚爾が復活した経緯
偽夏油の協力者であるオガミ婆は、降霊術という特殊な術式の使い手です。
死者の遺体の一部を生きている人間に飲ませることで、死者を現世に呼び戻すことができます。
そして、オガミ婆は自分の孫に「禪院甚爾」の降霊術を施しました。
降霊術には魂の情報まで降ろすと依代の肉体が乗っ取られるリスクがあります。
そのため、オガミ婆は孫の意識を残したまま、甚爾の肉体のみ降霊したはずでした。
伏黒甚爾が渋谷事変で殺戮人形となった理由
天与呪縛によって呪力を持たず生まれてきた甚爾の肉体は、器である孫の呪力を消費せずに顕現し続けることができました。
そのため、通常とは異なり、甚爾の肉体が消えることなく存在し続けることになります。
降霊術は術式終了のタイミングを失い、甚爾は「強者との戦い」を求める殺戮人形として渋谷を徘徊します。
そして息子の恵と偶然出会い、記憶のない状態で恵に襲いかかっていきました。
伏黒甚爾「よかったな」の後に自害した理由
現世に興味がなかったから
作者が公式ファンブックで明かしているように、甚爾は生にあまり執着していません。
そのため、望まない形で蘇った甚爾には、生き続ける意味を見出せなかったと考えられます。
ただし、恵のことは気がかりだったのかもしれません。
恵が無事に生きており、五条に引き取られたことが分かったため、完全に未練がなくなったのでしょう。
伏黒恵を守るため
決して模範的な父親ではありませんでしたが、甚爾には恵への情が残されていました。
最愛の人との子である恵を、暴走した自分が傷つけることを防ぐため、意識が戻っている間に自害を選んだと推測できます。
渋谷で復活した甚爾は、自我もなく強者を求め戦い続ける人形となっていました。
しかし恵との対面で一時的に自我を取り戻し、息子を守るために命を絶つ決断をします。
完全な復活とは言えない「甚爾の姿をした存在」でしたが、最期の行動には父性愛があったと信じたいですね。
利用されることを避けるため
オガミ婆が術師殺害を命じた際、甚爾は激しい怒りを示しました。
他人から指図されることを嫌う甚爾は、禪院家での経験から人に利用されることを忌避していたのでしょう。
そのため、再び殺戮人形として扱われないよう、自ら命を絶つ選択をしたと考えられます。
まとめ
伏黒甚爾の「よかったな」という言葉には、複数の意味が込められています。
息子の恵が禪院家に売られなかった安堵の気持ち、そして亡き妻との約束を果たせた安心感が表現されていたのでしょう。
最期に恵と対面した甚爾は記憶を取り戻し、息子を守るため、また他者に利用されることを拒むために自害を選びました。
「よかったな」と言い残して去った甚爾の言葉には、父親としての複雑な思いが垣間見えます。